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2022.12.27
竹ノ内 悠選手シクロクロス機材リポート -チネリ・VISION-
Cinelli Nemo Tig Gravel 改Cyclocross Frame ネモティググラベル シクロクロス仕様車
まさかこのようなことになるとは。
このフレームを紹介するにあたって、まずはバックストーリーをお伝えしたい。
シクロクロス競技を継続するために、新たなスポンサー様を探していた。タイムペダルとガエルネシューズで10年以上お世話になっているポディウムより、チネリはどうか、というお話をいただいた。グラベルの潮流の中、チネリもご多分に漏れずシクロクロスフレームがラインアップから無くなっていた。
しかし、スチールのグラベルモデルをシクロクロス用に作り替えてみようという提案だった。ジオメトリーやフレームの付属品など、シクロクロスレース仕様にイタリア本国で仕上げてくれるという。
時期は8月末。11月のUCIレースに間に合わせてほしいとお願いしたが、正直なところ、約2か月で本当に出来上がってくるのか不安だった。
ジオメトリーに関しては僕も専門家ではない。トップ長とシート角、ヘッド長を提案。idmatchで出したポジションをベースに2,3度やりとりした後、チネリが図面を引いた。まさに専用設計。
そして、失礼ながら、本当にフレームが出来上がってきた。
市販モデルのネモティググラベルとは雰囲気がまったく異なる、レーシングモデルの空気感を放っている。フレームは内装ディスク仕様でダボなどが除かれ、スッキリとした印象。カラーはGold Pinkで独特の雰囲気をまとっていた。
乗った印象は、クセがなく、普通で良い。
この「普通」とは決して悪い意味ではない。レースにおいて「普通」であることの大切さは過去の経験で痛感している。硬いとか柔らかいという表現ではなく、すべてにおいて適度であり、フレームの主張が強すぎない。カーボンフレームと比べると、スチールは柔らかい、しなる、疲れない、と表現されることが多い。僕に言わせると、それらすべてが自転車における適度な範囲内に収まっていると感じたのがこのフレームである。
軽量ではないが、走行感の重さは全くない。軽快に走ってくれる。加速や伸びが気持ちよく、減速時には充分な剛性感を感じる。よれることがない。現在5レースを走ったが、トラブルなしで信頼性にも問題がない。
ロードワークでも自然と平均スピードが高くなる。漕いでいる以上に勝手に前に進んでくれる印象があり、不思議に思えた。
「普通」過ぎて、悪いところがない。当たり前のことが当たり前、そんな最高な良いフレームだ。
Vision METRON 55 SL DISC メトロン55SLディスク
お気に入りのホイール。スピードが増すごとに勝手に前にバイクを押し出してくれる。コーナーでの旋回もリムハイトをあまり感じさせず、自然と曲がってくれるし失速しづらい。METRON 40と比べると踏み出しの重さはあるかもしれないが、ハンディは実際感じない。踏んだあとのホイールによる押し出しで、結局はスピードにつながる。僕のようにペダリングが汚いとペダリングの下死点上死点でのロスを補ってくれるホイールがとても良く、常にペダルを回しているような印象を与えてくれる。メトロン55は最近出会った中で一番良いホイール。タイヤは砂やドライ用をセットし、スピードを重視するシーンで使用している。
Vision METRON 40 SL DISC メトロン40SLディスク
踏み出しの軽さを犠牲にせず、エアロ効果による伸びも体感できる高バランスホイールという印象。ダンシングしてホイールが力負けすることはなく、弾性を保ったまま前に押し出してくれる。30ミリハイト台のホイールより高速時の伸びがあり、レースで安心して使える。レースでは主に泥と登りの多いシーンで使用するようにタイヤをセットしている。
Vision METRON Handlebar, Stem and Seatpost メトロン ハンドルバー ステム シートポスト
ハンドルバーはSTIレバーに対して自然と収まり、コンパクトなハンドルはシクロクロスでもしっかり対応できる。カーボンらしく、しなりがあり、悪路でも不快感がない。かといって、ふわふわとして、操作が一定しないということにはならない。そのあたりはステムと相まって、いいバランスになっているのだと思う。ステムは迫力があるが、硬すぎることはなく、とても使いやすい。
シートポストもやはり硬すぎず、程よくしなる。調整幅も十分にあり、しっかりと締め付ければシクロクロスのような飛び乗るシーンが多くても問題なく使用できる信頼性がある。
Vision METRON CARBON STEMについては
Vision METRON SB20 SEATPOSTについては
Vision TRIMAX CARBON 4D HANDLEBARについては
プロフィール
竹之内悠自転車選手