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2020.12.03
リムブレーキからディスクブレーキへ:ホイールはどう進化したでしょうか?
パワフルで新しいブレーキングシステムであるディスクブレーキの登場で、その性能を引き出すため機材全体に様々な変化が生じています。
特にホイールについては、リムサイドのブレーキトラックを取り去り、その代わりにハブにブレーキローターをマウントするという、根本的な見直しが必要になりました。また、高い制動力を持つディスクブレーキの登場はライディングスタイルにも影響し、今まで以上に高速でコーナーに突入し、今まで以上に遅めにブレーキングできるようになりました。
ディスクブレーキのホイールは従来のリムブレーキのホイールからどう進化したでしょうか?
1)新たな力の配分
ディスクブレーキ化により、制動力がホイールのどの部分にどのように伝わるかが変わりました。
従来のリムブレーキのホイールでは、両側のブレーキトラックをブレーキキャリパーが同時に挟み込み、ホイールの中心に偏りなく均等に力がかかります。それに対してディスクブレーキのホイールでは、ホイールへの力のかかり方が劇的に変化しました。
リムの中心ではなくローターがマウントされるハブの片側にまず力がかかり、ハブ、スポーク、リム、そしてタイヤへと伝わっていきます。それに従い、ホイールを構成する各パーツに変化が生じました。
2)リムの変化
Visionでは、ホイールの実重量だけでなく、エアロ性能を加味した”エアロダイナミックウェイト”に注目しています。リムにブレーキトラックを設ける必要が無くなったため、Visionではエアロ性能に注目して、より幅広でラウンドしたリム形状を目指し、その結果従来より多くの材料を使用することになりました。
これらの新世代のリムは、エアロ性能が向上しているだけでなく、特にホビーライダーにとって、安定し、安全で、様々な風のコンディションのもとでハンドリングしやすくなっています。そして重量の増加も抑えられています。例えばMetron55SLでは、従来のリムブレーキモデルのチューブレス/クリンチャー対応のホイールが1,580gであるのに対して、ディスクブレーキモデルは1,630gと僅かな重量増にとどまっています。
3)ハブの主要な役割
ディスクブレーキの登場で、ハブはホイール全体の性能にとってより重要なパーツになりました。リムブレーキホイールのハブは、軽量で回転がスムーズであればOKでした。
ディスクブレーキホイールにおいては、ハブは制動力を最初に受け止める役割も担うことになりました。スルーアクスルとローターマウントを保持して制動力を受け止めるため、ハブのシェルの直径が大きくなり、より高剛性で効率的な高性能ハブが必要になっています。
4)スポークについて
ディスクブレーキ化によりスポークも影響を受けました。特にフロントホイールは大きく変化し、ホイール中央にマウントされたローターから生じる制動力に耐えられるよう、スポーク数が増えスポークパターンが変わりました。それと比べるとリアホイールへの影響は少ないですが、やはり制動力に耐えられるようスポーク数が増えました。例えばMetron55SLでは、リムブレーキモデルはフロントが16本、リアが21本であるのに対し、ディスクブレーキモデルはフロントが21本、リアが24本となっています。
このように、リムブレーキとディスクブレーキではホイールに様々な違いが生じています。これらの技術的な特徴と併せて、メリットもお伝えしておきたいと思います。
まず、ディスクブレーキホイールにより、ドライでもウェットでも制動力が大幅に高まり、サイクリングがより安全になります。
また、リムのブレーキトラックが無くなったことで、ディスクブレーキホイールは従来のリムブレーキホイールよりもはるかに長持ちします。
最後に、リムからハブに重量がシフトしたことで、軽い力で加速できるようになり、ライダーの疲労も軽減されます。