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2019.02.20
コロンブスとチネリの創造性:職人こそ新たなヒーロー
コロンブスとチネリの創造性: 職人こそ新たなヒーロー
アントニオ・コロンボ(マウロ・ファリーナ著)
アントニオ・コロンボのファミリーはコロンブス鋼管会社を創業。
彼自身はチネリブランドのオーナーとして40年以上の経験をもち、イタリアの歴史的ブランドを2つ統率している。
父はサイクリストでした。
子供のころ、日曜日に父のサイクリングの準備を手伝うのが楽しみでした。
Romaniの自転車はまだ大切にとってあります。カンパニョーロ、コロンブス、チネリなどのイタリアブランドがイタリアでロードバイクを支えていた頃です。
チネリ本社にはじめて足を踏み入れた時、大きくなっても、子ども時代の父との思い出こそが自分を作り上げてきたのだということを理解しました。
コロンボの業績は、イタリアの匠の技を維持しただけでなく、ヨーロッパ発のマウンテンバイク、
ランピチーノ、レーザー、ブートレッグ、などの象徴的な製品を生み出したことにもある。
自分を簡潔に表現するならば、「後悔の念にさいなまれた事業家」となると思います。
アートとデザインが大好きな子どもでした。事業家として必要な数字や製造、起業家精神には欠けています。
「赤い旅団」の旋風が吹きあれた混沌たる政治状況のなかで、自分は自転車とデザインの世界に現実逃避をしていたといえます。
父の友人であった元自転車選手のチーノ・チネリは、チネリブランドを私に売ることで、私の人生にカラーと情熱と機会を与えてくれました。
競技経験のない私にはわからないことがある、とチーノは考え、スムーズにいかないこともありましたが。
当時から、プロ選手でないと本当には自転車メーカーの仲間に入れてもらえないところがありました。
私はこの不文律を無視し、アート、文学、音楽、デザインに関する自分の情熱を注ぎこみましたが、そのことが周りの猜疑心を呼ぶこともありました。
私は開発者ではないし、自分が興味を持ってきた物事を通して世界を別の視点から見、新たな可能性を見出してきました。
また、多くのアーティストたちとの交流を通して、アートとストリートアートが溶け合い、
古い教会がフレスコ画で新たな空間としてよみがえったようなことが起こりました。
アートとデザインはまさに革新をもたらすのです。
私にとって自転車に名前をつけることはとても大切なことで、その自転車の核心的価値を引き出す作業でもあります。
アーティストやミュージシャンから多くのひらめきをもらいました。
アルジェンティーヴォというマウンテンバイクのモデル名は、クイックシルバー・メッセンジャー・サービスの歌からとりました。
60年代のサイケデリック・ロックバンドです。
高級ロードバイクのウィリンという名前には思い入れがあります。リトルフィートというブルースバンドからヒントを得ました。
アリゾナとメキシコを往復するトラックドライバーの歌です。
話は尽きませんが、名前に意味を込めること、それがは私ができる貢献の1つだと考えています。
チネリのように小規模でラクジュアリーなブランドとして生きていくことは、最高のトラットリア(大衆食堂)を目指すことです(笑)!
パフォーマンスを目標としながらも、イタリア最高の楽しみ、素晴らしい食事を目指しています。
景色を楽しみながら50キロ走って、そこに最高のトラットリアがあれば、これ以上の幸せはありません。
1人でネモに乗ることが多いです。好きなルートがあって、妻が一緒に走ることもあります。
サイクリストとしてのライフスタイルとは、より良い世界を求めることです。
自転車はいろいろな象徴にたとえられます。そのなかで最高のものは自由だと思います。
その核心的な価値を中心として、未来でも良心的な移動手段として発展するでしょう。
チネリのビジネスで体験した最大の難関は、人の気持ちを理解しない人たち、チネリの価値を理解しない人たち、
お客様がチネリに何を求めているのかを理解しない人たちを信頼したことでした。
自分たちのコア・ヴァリューを再確認し、軌道修正をする作業が必要でした。
チネリの核心には、競技があり、抵抗の精神があるのです。
そのチネリの価値を共有してくれるサイクリストたちがチネリ・ファミリーに参加してくれています。
インスタグラムでも20万人以上がフォローしています。イタリアの会社としては、いい結果だと思っています。
考え、アイデア、スマイルを分かち合うこと、趣味やいくらかの皮肉を共有することが、このスポーツでは可能です。
いまの自転車界は、スピード、金、パフォーマンス、販売目標などばかりが中心となってしまいました。
軌道修正は簡単ではないですが、可能だと思っています。
コロンブスのチューブを使ってフレームを溶接する若者たちが増えています。
彼らはヒーローです。風車に立ち向かったドン・キホーテではありません。
大量生産が進むにつれ、職人としての技を磨き、個人としてなにかを表現する人たちが生まれていくと信じています。
抄訳
CREATIVE BROTHERS ― アーティスト:クリエイティブ
2019年2月7日